
サイトを巡回してデータを収集する「クローラー」というプログラムがあります。クラウドフレアの情報によれば、10年前、Googleは、2ページクロールするごとに1人をサイトに送客していましたが、2025年の6月時点では、1人送客するには14ページを読み取る必要があるそうです。また、AI企業からの送客はさらに少なく、OpenAIは1,700ページあたり1人、Anthropicは73,000人という比率になっているとのことでした。
これは、人は“ウェブを見なくなる”というより、“ウェブを直接参照しなくなる”方向に進んでいるということだと考えています。
GoogleのAIオーバービューの影響で、サイトの訪問者が3割程度減っているとも言われていますが、私たち自身も、2025年以降、自社サイトの訪問者数が減少していることを確認しています。体感としても、これまでのようにウェブサイトが参照されなくなっていることは明らかです。
特に変化が大きかったのが、多くの人が調べ物として検索するようなハウツー記事でした。具体的には、手順や方法、定義をまとめたタイプの記事のページビューが大きく減少しています。
これは、AIが「記事を紹介する存在」ではなく、ハウツーそのものを回答として提示するようになったことが影響していると見ています。ユーザーにとっては、わざわざページを開かなくても、その場で答えが手に入るためです。
言い換えれば、これはコンテンツの質が下がったという話ではなく、役割そのものがAIに置き換わった結果だと考えています。
「答えを知ること」が目的の情報については、ウェブサイトを訪問する必然性が構造的に失われつつある──その典型的な例だと言えるでしょう。
こうした変化は、今日明日ビジネスがダメになるというものではありませんが、もう元には戻りません。何が起きているのかをしっかりと見極めて適応していく必要があります。
人は何を参照するのか?
いま起きているのは、「検索 → 複数サイトを読む」から「質問 → AIが要約・判断・翻訳した結果を受け取る」への移行です。
つまり人は、「ウェブそのもの」ではなく、「AIが編集したウェブ」を見るようになっているということ。
- 情報の一次ソースとしてのウェブ
- 情報のインターフェースとしてのAI
という 二層構造で世界を見始めています。
一次ソースとしてのWebサイトは、単に情報を網羅するものではなく、どの前提で、誰に向けて、その情報が有効なのかを明示している必要があると考えています。
ユーザーの役に立つことや、情報の正確性・鮮度を保つことは前提条件ですが、それだけでは「参照される一次情報」にはなりません。
単なる情報置き場との違いは、事実そのものではなく、その事実をどう判断し、どう位置づけているかが示されているかどうかです。
背景や文脈、判断の根拠が明らかになっている情報こそが、AIにとっても人にとっても、参照する価値のある一次ソースになると考えています。
ブリッジは、アルゴリズムを攻略するために情報を網羅するだけのコンテンツは、もうつくりません。
検索順位を上げることを目的にした記事ではなく、自分たちがどう考え、どう判断したのかが伝わるコンテンツを、これからは意識的につくっていきます。
なぜ「元サイトを見なくなる」のか
理由はシンプルです。
- 速い
- 比較しなくていい
- 判断を代行してくれる
しかも、「AIが言っている=ある程度正しそう」という 信頼のショートカットがすでに起きています。
これはGoogleのAI Overviewでも、ChatGPTなどでも同じ構造です。
“読む労力”が不要な世界では、原典を確認する動機そのものが薄れていきます。
ウェブサイトはもう不要なのか?
「ウェブサイト=集客ツール」という役割は、今後も確実に弱まっていくと考えています。
ただし、私たちはこの変化を危機とは捉えていません。
検索エンジンやAIの振る舞いが変わったというより、ウェブに求められる前提そのものが変わったと受け止めています。
集客を目的に情報を並べる時代から、考え方や判断の背景まで含めて参照される時代へ。
その前提に立てば、ウェブサイトは役割を失うのではなく、価値の置きどころが変わっただけだと考えています。
この前提の変化を嘆くのではなく、自分たちの価値観や判断を組み込んだ情報こそが意味を持つ時代になったと考えています。
AIは「答え」は出せる
AIは「答え」を出すことはできます。
でも、 AIは、
- その会社が何を信じているか
- なぜその判断をするのか
- どんな文脈でその答えに至ったのか
までは、まだ十分に表現できません。
では、何をすべきか
一般論としては、変化に合わせて役割を再定義する必要がある、という話になるのだと思います。
ただし、ブリッジでは、その再定義を「やることを増やす」方向では捉えていません。
私たちは、検索流入を取るためだけの、誰にでも作れる網羅型コンテンツは、もう作りません。
情報を並べること自体が価値になる時代は終わり、そうした役割はAIが担うようになったと考えているからです。
その代わりに、人の判断に役立ち、信頼を得るためのコンテンツ、そして会社がどんな世界観や価値観を持ち、どのような前提で判断しているのかが伝わるコンテンツに注力していきます。
AIは過去のデータや事実をもとに平均的な判断を行いますが、人間の価値観や考え方そのものを引き受けることはできません。
だからこそ私たちは、人の判断がにじむ情報、人間の視点や思想を色濃く感じられるコンテンツを生み出すことに価値があると考えています。
これまで
- 検索流入を取る
- 情報を整理して載せる
- 比較検討される場を作る
これから
- AIが参照するに値する情報源を作る
- 人が「この会社は信頼できそうだ」と腹落ちする文脈を置く
- AI経由で知った人が、最後に確認しに来る場所になる
言い換えると、ウェブは「入口」から「最終確認の場」へと変わると考えています。
具体的に、どう変わるのか
ウェブ制作は今後、
- SEOのためのページ量産
から
- AIに引用されやすい構造・語り・一次性
へシフトしていきます。
そして、
- ウェブ
- SNS
- note
- 登壇
- 対話
これらは「メディアが違う」のではなく、同じ思想を違う解像度で置く場所になります。
ブリッジの取り組みについて
文脈や編集、表面ではなく背景を重視するという考え方は、もともと自分たちの中にありました。
ただ、それをコンテンツとしてどう表現し、どう届けるかという点では、十分に向き合えていなかったのだと思います。
これまでは、自分たちの世界観や判断よりも、検索に強いコンテンツをつくることを優先しがちでした。調べて、網羅して、整理すれば、誰にでも作れる。そうしたやり方が成果につながっていた時期もありましたが、その一方で、どこか噛み合っていない感覚が残り続けていました。
実際、問い合わせのあとにお客様と直接お話しし、自分たちの考え方や取り組み方を説明する場面では、共感を得られることが少なくありませんでした。そのたびに、本当に伝えたい部分ほど、これまでのコンテンツでは伝えきれていなかったのではないかと感じるようになりました。
そこで考え方を改め、自分たちの価値観や判断を前提にしたコンテンツづくりへと舵を切りました。すると、情報を網羅することで広く届かせるのではなく、考え方を明示することで、価値観の合う会社や人とだけ自然につながるという変化が起き始めました。結果として、自分たちと方向性の合わないお客様との接点を減らすという役割も、コンテンツが担い始めています。
ブリッジはこれから、情報を増やすためのコンテンツではなく、自分たちがどんな前提で考え、どう判断する会社なのかが伝わるコンテンツだけを、意識的に残していきます。
投稿者プロフィール


- プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。徹底的なユーザー視点でのWEBサイトの構築やコンテンツ制作を通じて事業課題の解決を支援している。





