エモいコンテンツの作り方

「エモい」という言葉を耳にすることがありますが、そもそも「エモい」というのは、どういうことなのでしょう…?

ネット上での抗ミュニケーションや若者を中心に使われる「エモい」という言葉は、感傷的、情緒的に「何とも言い表せない気持ち」になること、と定義をされることが多いようです。

情緒的なものを感じさせるものが「エモい」というのは誰もが感覚的にわかるんじゃないかなと思いますが、ビジネスの中ではどう考えれば良いのでしょうか。

僕は、もともと企業のプロモーションサイトをはじめとする「エモーショナルなコンテンツ」づくりに情熱を注いでいたのですが、検索エンジンがWEBマーケティングの主役になってからは、エモーショナルなコンテンツづくりからは少し距離をおいて活動をしてきました。

ですが、今、また「エモーショナル」なコンテンツや表現が必要とされるようになってきたなと感じています。SEOや広告を使ってサイトへのアクセスを増やしたとしても、ありふれたコピーやビジュアル、コンテンツでは訪問者の心を動かすことができないので、行動につながらないからです。

僕たちがWEB制作やコンテンツ制作の中で取り組んでいる「らしさ」のデザインにおいても、「エモい」は欠かせない要素です。

この記事では、僕たちブリッジ流の「エモい」コンテンツの作り方についてお話をしたいと思います。つくるものは、WEBサイト全体であったり、サイト内のページやコンテンツだったり、映像や写真だったりと多岐にわたりますが、考え方はいつも同じです。

ターゲットを明確にする

「エモい」に限らず、サイトやコンテンツをつくる時には、必ず「誰」のためのコンテンツなのかを決める必要があります。ビジネスの中での「エモい」は偶然の産物ではありません。誰の心を動かしたいのか。どうやって動かすのか。結果として、どういう行動をとって欲しいのかを最初に考えます。

心がざわざわするのは、メッセージを受け取った人が「これは自分のことかも…」と思った時です。だから、「誰」に「自分のこと」と思ってもらいたいのかを決めなければなりません。

ですが、「誰」を決めるのが案外難しい。徹底的に絞り込んで考える必要があるからです。僕たちの場合は一人の個人のレベルまでターゲットを絞り込みます。波及効果を考えるとターゲットを広げたくなるのですが、誰にでもあてはまるメッセージは、誰の心にもひっかかりをつくれないからです。

誰かにプレゼントをあげることを想像してみてください。

プレゼント全般よりも、男性向けプレゼント、女性向けプレゼントとした方が、どんなものをあげたら良いのかわかりやすいですよね。30代男性向けプレゼント、20代女性向けプレゼントの方がさらにイメージしやすいし、さらには、「この人」にあげるなら…と考えて選んだプレゼントの方が喜ばれるはずです。

僕たちがつくるコンテンツは、万人が「エモい」と思うものではなく、ある特定の人が目にした時に「エモい」と感じるようなものを目指します。

うまくいかないケースは「誰」があいまいであるがために、メッセージが弱くなってしまうことが多いように思います。

トリガーとなる原体験を見つけメッセージをつくる

ターゲットを決めて、どんなメッセージを伝えるかを考える際に、僕たちが大切にしているのが「原体験」です。

原体験を見つけるためにも、ターゲットがしっかりと決まっている必要があります。

こういう原体験を持っている人に、こういうメッセージを届けて、こんな風に心を動かすトリガーにできないか、みたいに考えていきます。直接的、間接的に話をきいたり、調べたりしながらストーリーやシーンをつくっていきます。

とある一人をイメージしてメッセージを考えていくわけですが、その原体験をもとに具体的にイメージしたり、一歩引いて抽象化したりしながら、バランスを見たりもします。

原体験というと幼少の頃の、みたいなイメージですが、ここでいう原体験では僕はもう少し広く考えています。何歳になってもその人の考え方や価値観に影響を与えるようなできごとがあるはず、と考えるからです。

共感を生む要素はどちらかというと一過性のものであるのに対して、原体験にはその人なりの考え方や価値観が含まれるので、持続的な結びつきをつくれると考えています。

メッセージを表現として作り込む

最後に具体的な表現に落とし込んでコンテンツとして作り込んでいきます。ここで大切なのが、前述の原体験です。こちらが伝えたいメッセージをどう表現するのかという発想ではなく、相手の視点で発想するためには原体験が重要になってきます。

どんなものを見てもらえば、原体験を呼び覚まし、紐付け、自分ごととして捉えてもらえるのか。

僕たちは、メッセージを物語のなかで伝えることを考えています。ページは上から下への流れで読まれるものだし、1枚の写真にも、その前後にも物語があります。

ターゲットを決めて、分析をしたり、観察をしたり、想像をしたりしながら、表現に変えていく。エモーショナルなコンテンツをつくるということは、実はゴールに向かってロジカルなステップを経て表現を昇華していくことに他なりません。

最後の表現のところが肝にはなりますが、ビジネスの中での「エモい」は、ノウハウを持っていれば再現が可能です。僕たちが考えるノウハウというのは、ロジカルに考えるところから始まりゴールにたどり着くまでの一連のプロセスであって、表現手法のノウハウを意味するものではありません。

映像で言うなら、流行りのシネマティックな表現は、あくまでも表現手法の一つであって、エモさの本質ではないと思っています。視覚的にはかっこいいんだけどイマイチグッとこない作品が多いのは、見る人の原体験に触れることなく、表現手法のアピールにしか見えないからなんじゃないかなぁと思っています。こんな分析とか、もう完全に職業病ですね(笑)。

個人で作る作品というのは、誰がどう思おうと何と言おうと、好きなものを好きなようにやれば良いと思っています。僕自身、感性による、再現性のない、言葉にできないようなエモさに憧れますし、自分の撮りたいものを撮り、作りたいものを作りたいといつも思っていたりもします。

一方で、ビジネスで求められる(というか僕たちが自分たちから提案をしている)エモさは、こうした作品作りとは違います。

ビジネスでの「エモい」をつくるためには、こうしたダブルスタンダードを理解するところから始まります。

投稿者プロフィール

橋本敬(はしもとたかし)
プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。WEBサイトの制作・構築から集客・販促などの活用コンサルティングまで中小企業のWEBサイトの活用をサポートしている。