
「ターゲット」という言葉を聞くたびに、少しだけ不思議に思う。
人はみんな違う。生まれた場所も、育った環境も、
好きな食べ物も、寝る前に考えることも。
誰一人として同じ人はいないのに、マーケティングの世界では
「この人たちは同じグループ」とくくられる。
それは、まるで大きな棚にラベルを貼るような作業だ。
20代男性、30代主婦、シニア層……。
でも、実際にそこにいるのは、「誰か」ではなく「ひとりひとり」だ。
それでも、ターゲットという考え方はなくならない。
なぜか。
たぶん、それは「みんな違うけど、どこか似ている部分がある」からだ。
たとえば、ある日、ふとカレーが食べたくなるとする。
すると、同じように「カレーが食べたい」と思っている人が
世の中にはたくさんいる。
カレーを食べたくなる理由は人それぞれだけど、その瞬間だけは、
「カレーを食べたい人」というグループに入る。
マーケティングのターゲットも、そんなものかもしれない。
人生すべてが同じわけじゃない。
でも、何かしらのタイミングで、何かしらの理由で、
同じものに惹かれる人たちがいる。
その「同じ」が重なるポイントを見つけることが、
マーケティングの仕事なのかもしれない。
「ターゲットを定める」というより、
「ターゲットが浮かび上がる」と言ったほうがしっくりくる。
たくさんの人のなかに、ある共通点がふっと現れる瞬間。
その輪郭をそっとなぞるようにして、言葉を届ける。
だからこそ、マーケティングは面白い。
人はみんな違う。でも、どこかでつながることもある。
そのつながりの糸を見つけて、そっと引いてみる。
すると、思いがけない形で誰かと誰かがつながることがある。
ターゲットを探すことは、人を枠にはめることじゃない。
むしろ、その人の「こうだったらいいな」を見つけることなのかもしれない。
たぶん、そんなことを思いながら、
今日もマーケティングのことを考えている。
ブリッジ代表の橋本の日々の気づきや考えに関するコラム。
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投稿者プロフィール


- プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。徹底的なユーザー視点でのWEBサイトの構築やコンテンツ制作を通じて事業課題の解決を支援している。
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