
自社の強みや商品・サービスの内容はWebサイトにきちんと載せている。
それでも、なぜか伝わらない。少なくとも伝わっている実感がない。そして、問い合わせにもつながらない。
もし、そのように感じることがあるとしたら、原因は言葉が足りないことではなく、企業が伝えたいことと、訪問者が知りたいことのあいだにズレがあるからかもしれません。
この記事では、そのズレがなぜ起きるのか、どう整理すれば伝わるWebサイトになるのかを、ブリッジが重視している「文脈設計」という考え方から整理します。
多くのWebサイトは、企業の文脈で作られている
Webサイトをつくるとき、多くの会社はまず、自分たちが伝えたいことから考えます。
- 会社の理念
- サービスの特長
- 代表の想い
- 導入実績
- 選ばれる理由
もちろん、これらは大事です。ただ、そこに書かれていることが、そのまま相手に伝わるとは限りません。
なぜなら、訪問者は自分の問題を解決したくてWebサイトを見ているからです。
- 自社に合う会社かどうかを知りたい
- 今の課題を相談できそうか確かめたい
- 何が違うのかを比較したい
- 依頼するに値する相手か見極めたい
つまり、訪問者には訪問者の文脈があります。
一方で、企業には企業の文脈があります。
企業は、自分たちの良さを伝えたい。
訪問者は、自分の問題を解決する方法を知りたい。
この二つがずれたままでは、どれだけ情報を載せても、なかなか伝わりません。
大事なのは、会社のことを語る前に、その価値やサービスが相手のどんな問題にどう関わるのかが伝わることです。
でも、多くのWebサイトでは、その順番が逆になってしまう。
心当たりはないでしょうか?
このズレを埋めるには、企業の話をうまく言い換えるだけでは足りません。まず必要なのは、訪問者の文脈と企業の文脈を並べて、どこがずれ、どこなら重なるのかを見つけることです。
文脈設計とは何か
ブリッジでは、企業が伝えたいことと、訪問者の状況や判断軸を重ね合わせながら、相手に届く形へ整えていく考え方を「文脈設計」と呼んでいます。
訪問者には、今どんな状況にいるのか、何を知りたいのか、何を不安に感じているのかという文脈があります。
企業にも、何を強みとし、誰に価値を届けたいのかという文脈があります。
文脈設計は、その二つを重ねながら、言葉や見せ方、情報の順番を整えていくための考え方です。
ここで大事なのは、企業の言いたいことを捨てることではありません。また、相手に迎合することでもありません。
企業の考えや価値を、相手に届く形へ翻訳していくこと。そのために、相手の立場や状況を理解し、どの入口から伝えるかを考えること。
それが文脈設計です。
同じサービスでも、誰に向けて、どんな場面で伝えるかによって、届く言葉は変わります。同じ実績でも、相手の関心に合った見せ方をしなければ、意味のある情報として機能しません。
文脈設計とは、そうした伝わり方の土台を整えることです。
なぜ多くのWebサイトは、自社の話ばかりになってしまうのか
Webサイトづくりでは、ターゲットを考えることが大事だと言われます。ペルソナを設計し、誰に向けた発信なのかを明確にする。それ自体は間違っていません。
ただ、ターゲットを決めたからといって、相手の文脈が見えているとは限りません。
年齢、性別、役職、業種。
そうした属性は整理できても、その人が今どんな状況にいて、何を迷い、何を基準に判断しようとしているのかまでは、見えていないことが多いからです。
すると、最終的には企業側が言いたいことのほうが前に出てきます。
「自社の強みを伝えたい」「他社との違いを見せたい」「サービスの良さを説明したい」
その結果、サイトは「自社の話をきちんとしている」ように見えて、相手にとっては、自分ごとにならないページになってしまう。
ターゲットは、伝える相手である前に、理解すべき相手です。属性を決めるだけでは足りません。
その人が今どこにいて、何を見れば動けるのかまで考えてはじめて、文脈設計になります。
文脈設計の考え方
文脈設計では、主に三つのことを整理していきます。
1. 訪問者の文脈を深掘りする
ペルソナをつくること自体が悪いわけではありません。ただ、文脈設計で本当に見たいのは、属性よりも、その人が置かれている状況と感情です。
- 何に困っているのか
- なぜ今その課題が気になっているのか
- 何を急いでいて、何に不安を感じているのか
- どんな比較をしていて、どこで迷っているのか
たとえば、同じように「Web制作会社を探している人」でも、状況はかなり違います。
すでに課題が明確で、具体的に依頼先を探している人もいれば、サイトを見直したい気持ちはあるけれど、何から始めるべきかわからない人もいる。上司に言われて制作会社をいくつかピックアップする人もいます。今の制作会社に違和感はあるものの、その違和感をまだ言葉にできていない人もいます。
重要なのは、その人の肩書きではなく、その人が今どんな状況の中にいるのかです。
文脈設計では、その状況と感情をできるだけ具体的に見ていきます。相手を属性ではなく、状態として捉える。
ここが出発点になります。
2. 企業の文脈を言語化する
相手のことだけを考えていても、文脈設計にはなりません。企業側の文脈も整理する必要があります。
- 自社は何を大切にしているのか
- 何を強みとしているのか
- どんな相手に、どんな価値を届けたいのか
- そのために、どこまで支援できるのか
ここでよくあるのが、「丁寧です」「対応が早いです」「品質が高いです」といった表現で強みを語ってしまうことです。
もちろん、それ自体は悪くありません。ただ、それだけでは、その会社ならではの価値にはなりにくい。
どの会社も言えることだからです。
強みを言語化するとは、立派なコピーをつくることではありません。どんな相手に、どんな場面で、どのように価値を発揮するのかを整理することです。
たとえば、制作物そのものよりも、何をどう伝えるべきかの整理から入れることなのか。業界理解の深さなのか。相談しにくいことまで含めて言葉にできることなのか。表面的なデザインではなく、事業や顧客理解から構造を整えられることなのか。
その整理ができてはじめて、サービス説明も実績紹介も、意味のある見せ方になります。
3. ズレを発見して設計に反映する
訪問者の文脈と企業の文脈が整理できたら、次はそのズレを見つけます。
企業は幅広く対応できることを伝えたい。でも、相手にはかえって何が得意なのかわからなくなってしまう。
企業は丁寧に説明しているつもり。でも、相手にはまわりくどく感じられるし、そもそも当たり前のことかもしれない。
こうしたズレは、言葉そのものよりも、前提のズレから生まれることが多いです。
だから、文脈設計では、ただコピーを直すのではなく、どのページで、どの順番で、どんな情報を見せるべきかを考えます。
- どこで相手の不安をほどくのか
- どこで判断材料を出すのか
- どこで会社らしさを伝えるのか
この整理があると、情報設計もデザインも、バラバラではなく意味のあるものになります。
文脈をもとに考えることで、なんとなく良さげでそれっぽい言葉やデザインがぐっと引き締まります。
こんなとき、文脈設計が必要になる
文脈設計という言葉だけ聞くと、少し特別なことのように思えるかもしれません。
でも実際には、次のような場面で必要になることが多いです。
- 自社の強みや違いが、うまく言葉にならない
- サイトを見直したいけれど、何から整理すべきかわからない
- 見た目は整っているのに、問い合わせや相談につながらない
- サービス内容は載っているのに、伝わっている実感がない
- 比較されると、価格や見た目以外の違いがうまく伝わらない
こういうとき、問題はデザインやコピーの弱さだけではありません。
その前にある、誰に何をどう届けるかの整理が足りていないことが多いのです。
文脈設計と心の動き
文脈が揃うとは、情報が正しく並んでいる状態ではありません。相手の中で「これは自分に関係がある」と感じられる状態のことです。
人は、自分と関係のない情報にはなかなか反応しません。どれだけ整ったサイトでも、自分に必要なものとして見えなければ、通り過ぎてしまいます。
逆に、「あ、これ自分のことかもしれない」と感じた瞬間、読み方は変わります。少し立ち止まり、もう少し知りたいと思う。比べるためではなく、理解するために読むようになる。
そこではじめて、言葉もデザインも効いてきます。
文脈設計が目指しているのは、情報をきれいに整えることだけではありません。相手の中に、小さな関心や納得や安心が生まれる状態をつくることです。
それは大げさな演出ではなくてもいい。
ただ、「ちゃんと自分のこととして読める」状態がつくれれば、心は少し動きます。
文脈設計は、デザインやコピーの前にある
文脈設計は、見た目を整えるための補助ではありません。むしろ、デザインやコピーに入る前に、何をどう伝えるかを揃えるための考え方です。
デザインは、整理された意味を見える形にするものです。
コピーは、整理された価値を言葉にするものです。
その前提が揃っていなければ、どれだけ表現を磨いても、伝わり方は安定しません。見た目はよくても、なぜか残らない。説明はしているのに、なぜか相談につながらない。そんな状態になりやすくなります。
逆に、文脈が揃っていると、言葉もデザインも無理に飾らなくても機能しやすくなります。
何を見せるべきかがはっきりしているからです。
だから、文脈設計は表現よりも前にあるべきものだと考えています。
文脈設計を含め、ブリッジがWebをどう捉えているかは、ブリッジの視点でも紹介しています。
まとめ
伝わらない原因は、表現の弱さだけにあるとは限りません。
- 誰に向けたサイトなのか
- その人は今どんな状況にいるのか
- 何を判断材料にしているのか
- 企業として何を伝えるべきなのか
その前提が揃ってはじめて、言葉やデザインは機能し始めます。
文脈設計とは、その前提を整えるための考え方です。企業が伝えたいことと、相手が知りたいこと。そのあいだにあるズレを見つけ、重なりをつくっていくこと。それが、伝わるWebサイトの土台になります。
もし、何をどう伝えるべきかがまだ整理しきれていないなら、見た目の前に文脈から見直してみる。
そこから始めるほうが、結果として伝わるサイトに近づけると私たちは考えています。
文脈から見直したいときは
自社の強みや違いを、うまく言葉にできない。
見た目は整っていても、伝わり方に違和感がある。
そんなときは、表現ではなく、その前の整理に原因があるかもしれません。
ブリッジは、文脈設計からWebサイト制作、コンテンツ制作、公開後の改善まで一貫して支援しています。
ご相談いただける内容は、サービスページでご紹介しています。
関連記事
文脈設計の考え方は、Web制作会社の選び方にも関わってきます。
あわせて、「Web制作会社の選び方で大切なのは、Web以外の話ができるかどうか」もご覧ください。
また、BtoBとBtoCでは、相手の状況も判断の仕方も大きく異なります。
この違いについては、「BtoBサイトとBtoCサイトで文脈設計がまったく異なる理由」で詳しく書いています。
投稿者プロフィール


- プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。企業とユーザーの文脈設計を得意としている。公益財団法人画像情報教育振興協会委員
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