
Webサイトを改善するとき、数字だけを見ていても、なぜそうなっているのかまでは分からないことがあります。
どこで離脱しているのか。どのボタンが押されていないのか。どのページが読まれているのか。そうした行動の背景には、ユーザーが感じている不安や迷いがあります。
デザイン思考は、その行動の背景にある理由を観察し、改善の仮説を立てるための考え方です。
「人間の行動は全てその人間の何らかの欲求に基づいており、当人にとって、合理的であるがゆえに生じる」
つまり、効果的なWebサイト改善を実現するためには、ユーザーの「欲求」とその欲求を満たすための「合理性」を理解することが成功への鍵となります。この理解を深めるための体系的な方法論をデザイン思考は提供してくれます。
デザイン思考では、ユーザーの行動を観察する
デザイン思考を用いたWebサイト改善において、観察の対象となるのは、ユーザーが感じているであろう感情と実際にとった行動の整合性です。観察の目的は、推測していた感情と行動の間に違和感や矛盾・意外性を発見することにあります。
この発見が、お客様の「潜在的ニーズ」へとつながり、革新的なWebサイト改善のきっかけになるのです。デザイン思考の手法を取り入れることで、従来の改善方法では気づけなかった新たな視点が得られます。
ECサイトで見える、行動と不安のズレ
たとえば、あるアパレルECサイトを想定してみます。あるアパレルECサイトでは、商品閲覧数は多いものの購入までの転換率が低いという課題を抱えていました。
「観察」から得られた気づき
ユーザーの行動を分析したところ、多くの人が商品ページを見た後、サイズガイドを確認し、そのまま離脱するという行動パターンが見られました。
感情と行動の矛盾点
- 感情:「気に入った服を購入したい」
- 行動:「サイズを確認した後に購入をやめる」
観察によって立てられた仮説: 「オンラインでは試着できないため、自分に合うサイズかどうかの不安が購入の障壁になっている」
デザイン思考を活用した解決案
- 詳細な採寸情報の追加(肩幅、袖丈、着丈など)
- 「この商品を購入した人の体型データ」の匿名表示
- 「簡易サイズ診断ツール」の導入
- 「返品・交換完全無料」の保証とその目立つ表示
結果
これらの改善により、サイズに関する不安という「潜在的ニーズ」に応えることができ、購入率が向上しました。特に簡易サイズ診断ツールは、ユーザーの体型データを入力するだけで最適なサイズを提案するため、非常に好評でした。
問い合わせにつながらない理由を観察する
あるインキュベーション施設が運営するベンチャー企業向け物件紹介Webサイトでは、情報ページの閲覧数は多いにも関わらず、見学申し込みや入居問い合わせにつながらないという課題がありました。
「観察」から得られた気づき
実際に入居したベンチャー企業にインタビューしたところ、多くの創業者がWebサイトを見たものの、「スペックや設備の説明だけではオフィス環境の使い勝手や他の入居企業との交流機会がイメージできない」ため、直接訪問したり、すでに入居している知人に意見を聞いてから決めていたことがわかりました。
感情と行動の矛盾点
- 感情:「スタートアップの成長を加速できる最適な環境を見つけたい」
- 行動:「Webサイトでは問い合わせせず、個人的なネットワークで情報収集する」
デザイン思考を活用した解決案
- 施設内の360°パノラマビューとバーチャルツアーの導入
- 入居企業同士のコラボレーション事例や成功事例の紹介
- 実際の入居者によるリアルな利用体験と得られたメリットのインタビュー動画
- 大学研究施設や支援プログラムとの連携状況の可視化
結果
これらの改善により、「実際の施設環境と起業支援エコシステムをイメージできない不安」という潜在的ニーズに応えることができ、Webサイトからの直接問い合わせが増加しました。特に360°パノラマビューは、見学前の起業家の疑問を解消し、施設見学後の入居率も向上させる効果がありました。
Webサイト改善で大切なのは、行動の理由を考えること
デザイン思考による観察から得られた知見をWebサイト改善に活かすポイント
- ユーザーが行動する(または行動しない)理由の「合理性」を理解する
- その合理性に基づいたコンテンツやユーザー体験を設計する
- 顕在ニーズだけでなく潜在ニーズに応えるWebサイト改善を実施する
- データに基づく改善と、デザイン思考による質的観察の両方を活用する
- 継続的な改善サイクルを回し、常にユーザー視点でWebサイトを最適化する
Webサイト改善にデザイン思考を取り入れることで、単なる見た目や機能の向上にとどまらず、ユーザーの本質的なニーズに応える形で進めることが可能になります。これにより、訪問者の満足度向上やコンバージョン率の改善につながるでしょう。
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投稿者プロフィール

- プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。企業とユーザーの文脈設計を得意としている。公益財団法人画像情報教育振興協会委員
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