「君は自分が感動しないと人を感動させられないと思っているんだね」
若かりし頃、とあるコンテンツの企画をしている時に言われた言葉です。この言葉をどう解釈して良いのかがわからず悩んでいた時期があります。
いわゆるスペシャルコンテンツが盛況な時代のことです。案を出しては潰し、潰してはまた考えて…。ターゲットとなる人たちに何を見せれば、どんな言葉で語りかければ心を動かすことができるのか。毎日そんなことばかり考えていました。
締め切りが迫ると焦りと寝不足で吐き気がするくらいでしたが、形になったときの喜びは何ものにも替え難いものでした。
そんな時にかけられた言葉。
楽しい。悲しい。面白い。怖い。自分の心が動くことがなくても、人の心を動かすことができるのかどうか。当時の僕にはわかりませんでした。
他の会社の人たちがどんなふうにコンテンツを企画し、つくっているのかなんてわからなかったけれど、みんな同じように自分たちの原体験の中から絞り出したり、想像したり、見たり聞いたり、それらを持ち寄って思いをぶつけ合いながらつくっているのだと思っていました。
数年後、転職した先で目の当たりにしたのは、ヒット作のエッセンスを抜き出して組み合わせるという手法でした。原体験とか感動とかエモーショナルな要素はなく、過去の「当たり」を足して「はまる」ストーリーをつくるというやり方。
彼らがリストアップした「当たり」は焦りと寝不足と吐き気と戦いながらつくられたものなんだろうなぁと思いつつ、肩書きのある人たちのアリかナシかの議論を眺めながら、僕は冒頭の言葉を思い出していました。
結局、その会社を辞めたのちに独立して今にいたるわけですが、つくり方には正しいとか正しくないとかはないと思っています。あるのは結果だけ。
それでも、自分が感動しないものをつくっても人を感動させることはできないと僕は強く思っています。パーソナライズが進み、最大公約数的なものには世の中は反応しなくなってきています。
1人の心を動かせないものは、誰の心も動かすことはできないんじゃないかなぁと。
僕たちには、やるべきことがまだまだあります。
投稿者プロフィール
- プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。徹底的なユーザー視点でのWEBサイトの構築やコンテンツ制作を通じて事業課題の解決を支援している。
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