
新規顧客を増やそうとすると、最初に「どうやって売るか」を考えがちです。
- SEOをやる
- 広告を出す
- SNSで発信する
- 営業をかける
もちろん、どこかの段階では手段を決める必要があります。ただ、その前に考えておきたいことがあります。
そもそも、どんなときに顧客は自社の商品やサービスを必要とするのか。
顧客は、いつでも同じように商品を必要としているわけではありません。会社や生活に何か変化が起き、それまで問題ではなかったことが問題になったときに、商品やサービスが必要になることがあります。
新規顧客を増やしたいなら、「どうやって売るか」を考える前に、需要が生まれるきっかけを見つけるところから始めてみるのは悪くないアイデアです。
顧客は、いつでも同じものを必要としているわけではない
たとえば、Webサイト制作を考えてみます。Webサイトが古い会社はたくさんあります。しかし、古いからといって、すべての会社がリニューアルしたいわけではありません。10年前につくったサイトでも、特に困っていなければ、そのまま使い続ける会社はあります。
一方で、それまでサイトをほとんど気にしていなかった会社が、ある日突然リニューアルを検討し始めることがあります。
新しい事業を始めた。
営業先を広げることになった。
採用を強化することになった。
会社の規模が大きくなった。
経営者が代替わりした。
こうした変化が起きると、それまで問題ではなかったWebサイトが、急に問題になります。
「今のサイトでは新しい事業を説明できない」
「採用候補者に見られるには、このままではまずい」
「新規営業を始めるなら、会社を調べられたときに信用されるサイトが必要だ」
ここで初めて、Webサイトをつくり直す理由が生まれます。つまり、需要は「Webサイトが古い」という状態だけから生まれているわけではありません。その会社に起きた変化によって、それまでなかった必要性が生まれています。
商品ではなく、その手前で起きていることを見る
これはWebサイトに限った話ではありません。例えば、税理士を探し始める会社にも、その前に何かが起きているはずです。
会社を設立した。
売上が増えて経理が複雑になった。
社員を雇うことになった。
これまで自分でやっていた経理が回らなくなった。
採用支援が必要になる会社にも、
退職者が出た。
新しい店舗を出す。
受注が増えて人手が足りなくなった。
新しい職種の採用を始める。
といった変化があります。
個人向けの商品でも同じです。
引っ越した。
子どもが生まれた。
仕事が変わった。
趣味を始めた。
旅行に行くことになった。
人や会社に何かが起き、その結果として新しい問題や欲求が生まれ、商品を探し始めます。商品を買ったところだけを見ると、「この人はこの商品が欲しかった」としか見えません。
その少し前まで遡ると、なぜ欲しくなったのかが見えてきます。
過去の受注を見るときは、「なぜ今だったのか」を考える
需要が生まれるきっかけを探すために、特別な調査が必要とは限りません。
まず見てみたいのは、自社の過去の顧客です。最近受注した案件について、「なぜ、この顧客は買ったのだろう」ではなく、「なぜ、このタイミングで必要になったのだろう」と考えてみます。
たとえば、ある会社が業務管理システムを導入したとします。
「業務を効率化したかったから」
だけでは、まだ一段浅いかもしれません。
なぜ急に効率化が必要になったのか。受注量が増えたのかもしれない。拠点が増えたのかもしれない。担当者が退職して、それまでのやり方では回らなくなったのかもしれない。
ここまで遡ると、「業務管理システムを必要としている会社」ではなく、「仕事量や組織が変わり、今までのやり方が合わなくなった会社」という見方ができます。
この違いは、新規顧客を探すときにかなり重要です。
すでに探している人だけが、見込み客ではない
「どうやって売るか」から考えると、すでに商品を探している人に目が向きやすくなります。
検索している人。
比較サイトを見ている人。
見積を取っている人。
こうした人たちは、確かに見込み客です。
一方で、そこには競合も集まっています。比較されやすく、価格競争にもなりやすい場所です。しかし、需要が生まれるきっかけから考えると、その少し前にいる人も見えてきます。
まだ具体的な商品は探していない。
ただ、会社や生活の中で何かが変わり始めている。
今までのやり方では少し不便になってきた。
近いうちに何かを変えなければならなくなりそうだ。
この段階では、本人もまだ「何を買えば解決するのか」が分かっていないことがあります。
ここに、情報を届ける余地があります。
変化が分かると、売り方はあとから決められる
ここまで考えてから、初めて「どうやって売るか」に戻ります。
たとえば、自社の商品が必要になる前に、顧客があるテーマについて検索するのであれば、記事をつくる方法があります。
業界ニュースとして表に出る変化なら、その情報を見て営業することもできます。
特定の専門家がその変化の前段階で顧客と接しているなら、紹介や協業という方法もあります。
顧客がSNSで情報収集するのであれば、そこで役立つ情報を発信する方法もあります。
つまり、最初から
「SEOをやる」
「SNSをやる」
「営業を増やす」
と決める必要はありません。
需要がどのように生まれるのかが分かれば、その流れのどこで顧客と接点をつくれるのかを考えられます。
その結果として、SEOが適している会社もあれば、営業の方がいい会社もあります。紹介を増やした方がいい会社もあります。
売り方は、需要が生まれる流れを見たあとに選ぶものです。
「何が売れたか」から「何が起きたか」へ
売上を振り返るとき、一般的には、
どの商品が売れたか。
どの業界に売れたか。
どの経路から問い合わせが来たか。
といったことを見ます。
そこにもうひとつ、買う前に、顧客に何が起きていたのかを加えてみます。
「新商品を出した会社からよく相談が来ている」
「社員数が増えたタイミングで依頼されることが多い」
「経営者が交代した会社から相談されることがある」
といった共通点が見つかれば、それは単なる顧客属性とは違う、新しい手がかりになります。業種や年齢、会社規模は、顧客が「どんな人か」を表します。
一方で、こうした変化は、「なぜ今、買うのか」を教えてくれます。
新規顧客を増やすとき、この視点を持っているかどうかで、探す場所も、発信する内容も変わってきます。
最初にやることは、施策を決めることではない
新規顧客を増やしたいと思ったら、すぐに新しい集客施策を始めたくなります。しかし、その前に一度、自社の過去の受注を振り返ってみる。
そして、顧客が自社を必要とする少し前に、何が起きていたのかを探してみます。そこに共通する変化が見つかれば、新しい顧客との接点を考える材料になります。
「どうやって売るか」を考える前に、「なぜ必要になるのか」を考える。
新規顧客を増やす方法を考えるなら、まずここから始めてみてください。
過去10件の受注から「需要のきっかけ」を探してみる
最近の新規受注を10件ほど書き出し、それぞれについて次のことを確認してみます。
- 顧客は、なぜそのタイミングで購入・相談したのか
- その少し前に、会社や生活にどんな変化があったのか
- その変化によって、どんな問題や欲求が生まれたのか
- 商品やサービスを探す前に、どんな情報を必要としていたのか
10件並べてみると、同じような出来事が何度か出てくるかもしれません。
それが、自社の商品やサービスにとっての需要が生まれるきっかけです。
そのきっかけが見えてから、
どこで顧客と接点をつくるのか。
何を伝えるのか。
どんな方法で届けるのか。
を考える。
新規顧客を増やすための施策は、その順番で考えた方が選びやすくなります。
投稿者プロフィール

- 株式会社ブリッジ代表取締役。Web制作会社、広告会社系列制作会社などで、企業サイトの企画・制作・プロデュースに従事。現在は、企業やサービスの強みの整理、文脈・情報設計からWebサイト制作を支援。早稲田大学政治経済学部卒業。公益財団法人画像情報教育振興協会委員
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