
ぼくがブリッジを会社にしてから、13年目になります。
これまで、紹介や問い合わせなどを通じて、さまざまなお仕事をいただいてきました。
もちろん、ずっと同じやり方でやってきたわけではありません。
その時々の状況に合わせて、新しいことを試してみたり、うまくいかなければやり方を変えたり。小さな会社なので、試して、失敗して、また考えることの繰り返しです。
そういう経験の中で、ぼくが仕事について考えるときに、以前から大切にしていることがあります。
それは、方法を考える前に、構造を見ることです。
ビジネスをしていると、「次に何をやるか」に意識が向きます。
営業を増やそう。
発信を始めよう。
新しいサービスをつくろう。
人を採用しよう。
もちろん、具体的な行動は必要です。
ただ、その前に、
「そもそも、なぜ今まで仕事が来ていたのだろう」
「お客さんは、どんな経緯で自分たちを選んでいたのだろう」
「その流れの中で、誰がどんな役割を果たしていたのだろう」
と考えてみる。
方法やルールは時代によって変わります。
でも、人や会社に何かの必要が生まれ、それを解決してくれる相手を探し、知り、信頼し、依頼する。
仕事が生まれる根っこの構造は、それほど大きく変わらないように思います。
今回は、その中でも「紹介で仕事が来る」という状態について考えてみます。
「紹介で仕事が来る」を分解してみる
「うちは紹介が多いんです」
長くビジネスをしている会社の方と話していると、よく聞く言葉です。
これは、とてもいいことだと思います。
誰かが自分たちのことを人に勧めてくれるのは、それまでの仕事に対する評価があるからです。
「あの会社なら大丈夫だよ」
「この分野なら詳しいよ」
「困っているなら、一度相談してみたら」
そんなふうに名前を出してもらえる。
これは、一朝一夕につくれるものではありません。
ただ、「紹介で仕事が来る」という現象を少し分解してみると、面白いことに気づきます。
紹介で仕事をしているとき、実は自分たちだけで仕事を取っているわけではありません。
紹介してくれる人が、かなり重要な役割を果たしています。
紹介者は、信用を渡している
たとえば、あなたが信頼している経営者から、
「そのことなら、○○さんに相談するといいよ」
と言われたとします。
○○さんを知らなくても、一度話を聞いてみようと思うのではないでしょうか。
なぜなら、
「この人が勧めるなら、変な人ではないだろう」
という信用があるからです。
紹介者が持っている信用の一部が、紹介された相手に移っています。
ぼくは、紹介にはこうした信用の移転が含まれていると思っています。
初めて会う相手なのに、最初から完全なゼロではない。
むしろ、少しプラスのところから関係が始まります。
これはとても大きなことです。
商売では、「この会社に任せて大丈夫だろうか」という不安をなくしていくことに、かなりの時間がかかります。
紹介では、その一部を紹介者が先に解消してくれています。
紹介者は、説明もしている
もう一つあります。
紹介する人は、ただ会社名を伝えているだけではありません。
「こういう仕事が得意だよ」
「この業界のことをよく知っているよ」
「細かい相談にも乗ってくれるよ」
「大きな会社より、こういう案件に向いていると思う」
といったことを、自然に説明してくれています。
つまり紹介者は、その会社がどんな会社なのかを説明する役割も担っています。
これは、自分たちでは気づきにくい部分です。
紹介で来たお客さんと話をすると、
「○○さんから、御社はこういう会社だと聞いています」
というところから会話が始まることがあります。
すでに、ある程度こちらのことを理解してくれている。
何が得意なのか。
どういう人なのか。
なぜ相談する価値がありそうなのか。
そこまで紹介者が伝えてくれていることもあります。
つまり、紹介で仕事が来るという構造の中には、
信用をつくること
と
自分たちの価値を説明すること
が、最初から組み込まれているわけです。
新しい顧客を取りに行くと、この2つがなくなる
ここで、紹介を中心に仕事をしてきた会社が、新しい顧客を増やしたいと考えたとします。
表面的には、「営業を増やす」という話に見えます。
でも、構造で見ると、もっと大きな変化が起きています。
紹介者がいなくなるのです。
それまで誰かが渡してくれていた信用がなくなります。
誰かが代わりにしてくれていた説明もなくなります。
相手は、自分たちのことを何も知らないところから始めます。
どんな会社なのか。
何が得意なのか。
本当に力があるのか。
自分たちに合っているのか。
任せて大丈夫なのか。
なぜ他ではなく、この会社に相談するのか。
これらを一つずつ判断しなければなりません。
紹介中心でやってきた会社が、新しい顧客を取りに行ったときに難しさを感じるのは、単に「営業に慣れていないから」ではないと思います。
それまで他の誰かが担ってくれていた役割まで、自分たちで引き受ける必要が出てくるからです。
仕事が減ったから、営業を増やす
たとえば、既存顧客からの依頼が少し減ってきた。
紹介も以前ほど来なくなった。
そこで、
「そろそろ新規の営業をやったほうがいいかもしれない」
と考える。
これは自然な流れです。
ただ、すぐに「どんな営業をするか」を考える前に、一度立ち止まって、
これまで仕事が来ていた構造は、どうなっていたのか
を考えたほうがいいと思っています。
なぜ紹介してもらえていたのか。
紹介した人は、自分たちのことをどう説明していたのか。
お客さんは、何を評価して他の人に勧めてくれていたのか。
なぜ最初の相談につながっていたのか。
なぜ一度仕事をした人から、また声をかけてもらえていたのか。
こうしたことをほどいていくと、自分たちが今まで商売を続けてこられた理由が見えてきます。
そして、新しい顧客を取りに行くときに、何が不足するのかも見えてきます。
「何をするか」より先に、「何がなくなるか」を見る
新しいことを始めようとすると、人はどうしても足し算で考えます。
何を始めるか。
何を増やすか。
何を導入するか。
でも、環境が変わるときには、
これまで自然に存在していた何がなくなるのか
を見ることも大切です。
紹介から新規顧客へ広げる場合なら、
紹介者からの信用がなくなる。
紹介者による説明がなくなる。
「知り合いの知り合い」という安心感がなくなる。
最初から話を聞いてもらえる前提がなくなる。
この状態で、それまでと同じ説明をしていても、同じようには伝わりません。
会社そのものは変わっていない。
提供しているサービスも変わっていない。
働いている人も変わっていない。
でも、相手との関係が始まる条件が変わっています。
だから、必要なことも変わります。
これは営業だけの話ではありません。
ビジネスの中では、こういうことがよく起こります。
自分たちの価値は、自分たちより周りが知っていることがある
ここでもう一つ、紹介という構造から見えてくることがあります。
それは、自分たちの価値を、自分たち自身がいちばん理解しているとは限らないということです。
長くやっていることほど、自分たちには当たり前になります。
すぐに返事をする。
難しい相談でもまず話を聞く。
業界特有の事情を理解している。
細かいことまで確認する。
社長が最後まで関わる。
本人たちにとっては、「普通に仕事をしているだけ」かもしれません。
でも、それを評価している人がいるから紹介が起きています。
紹介者が誰かに説明するときの言葉を聞いてみると、「そこを評価されていたのか」と気づくことがあります。
だから、新しい顧客を増やそうとするときには、新しいものをつくることだけを考えなくてもいいと思います。
まず、これまで何が評価されて、仕事がつながってきたのかを見つけ直す。
すでに持っているものの中に、次の顧客に伝えるべき価値があるかもしれません。
新規顧客を増やすとは、接点を増やすことだけではない
新しい顧客を増やすというと、「より多くの人に知ってもらうこと」と考えがちです。
もちろん、それも必要です。
でも、本当はもう少し複雑です。
知らない会社を知る。
少し興味を持つ。
自分に関係がありそうだと思う。
この会社なら相談できるかもしれないと感じる。
大丈夫そうだと思う。
そして、初めて連絡をする。
その一つひとつに、理由があります。
どこか一つだけを増やせば仕事が増えるとは限りません。
だから、新しい施策を考える前に、人がどのように自分たちを知り、どのように信頼し、どのように依頼に至るのかという流れ全体を見てみる。
そうすると、
「自分たちは、最初の接点が足りないのか」
「そもそも何をしている会社か伝わっていないのか」
「価値は伝わっているけれど、信用が足りないのか」
「相談する理由が弱いのか」
というように、考えるべきことが変わってきます。
やることを決めるのは、そのあとでいいと思います。
手法は変わっても、構造は残る
商売の世界では、新しい方法が次々に出てきます。
うまくいっている会社のやり方を見れば、試してみたくもなります。
ぼく自身、そうやっていろいろなことを試してきました。
それ自体は悪いことではありません。
ただ、同じ方法を使えば、同じ結果が出るとは限りません。
なぜなら、その会社と自分たちでは、仕事が生まれる構造が違うかもしれないからです。
誰に必要とされているのか。
どんなときに需要が生まれるのか。
誰の言葉が信用されるのか。
何を知ったときに興味を持つのか。
何が不安なのか。
何があれば一歩進めるのか。
こうした構造を見た上で、その時々に合う方法を選ぶ。
ぼくは、その順番が大事だと思っています。
まず、これまでの仕事がどこから来ていたのかを見てみる
紹介や既存のお客さんを中心に仕事をしてきた会社が、新しい顧客を増やしたいと思ったとき。
すぐに新しい営業方法を探す前に、まずはこれまでの仕事を振り返ってみるといいと思います。
たとえば、次のようなことです。
- これまでの仕事は、誰から、どのような経緯で来ていたのか
- 紹介してくれる人は、自分たちのことをどのように説明していたのか
- お客さんは、自分たちのどんなところを評価していたのか
- なぜ一度仕事をした人が、また声をかけてくれたのか
- 紹介がなくなったとき、これまで自然に得られていたもののうち何がなくなるのか
できれば、頭の中で考えるだけではなく、一度書き出してみてください。
すると、
「思っていた以上に、紹介者の信用に助けられていた」
「自分たちでは意識していなかったことを評価されていた」
「新しい顧客に対しては、この部分を自分たちで伝えなければならない」
といったことが見えてくるかもしれません。
新しい顧客を増やすというと、どうしても「これから何をするか」に目が向きます。
でも、その前に、
これまでなぜ仕事が生まれていたのか。
環境が変わることで、これまで自然に存在していた何がなくなるのか。
この2つを確認してみる。
そこまで見えてから次の方法を考えたほうが、自社に本当に必要なことを選びやすくなります。
投稿者プロフィール

- 株式会社ブリッジ代表取締役。Web制作会社、広告会社系列制作会社などで、企業サイトの企画・制作・プロデュースに従事。現在は、企業やサービスの強みの整理、文脈・情報設計からWebサイト制作を支援。早稲田大学政治経済学部卒業。公益財団法人画像情報教育振興協会委員
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