
AI検索の登場よりも前から、Webサイトやコンテンツについて、ずっと気になっていることがあります。
それは、検索を強く意識して情報を増やしていくほど、その会社らしさが見えにくくなることがある、ということです。
WebサイトにおいてSEOの必要性、顧客が知りたいことに答えることの重要性は言うまでもありません。何かを探している人がいて、その人の疑問や不安にきちんと応える。これは、Webサイトにとって基本的な役割です。
ただ、その一方で、やっぱり危うさもあると感じています。
- 検索されるキーワードを調べる
- 上位に表示されている記事を見る
- 競合の記事に書かれている項目を確認する
- 足りない情報を加え、さらに詳しく、網羅する
そうやって記事を整えていくこと自体は、決して間違いではありません。けれど、その作業を続けていくうちに、いつの間にか、顧客を見てつくるべきコンテンツが、競合の記事を見てつくる作業になってしまうことがあります。間接的に顧客を見ているのかもしれないけれど、「それでいいんだっけ?」という感覚がずっとあります。
時間とお金をかけたレッドオーシャンでの戦いはいつまで続くのだろうとずっと思っていました。
SEOが網羅ゲームになった結果、イタチごっこで同じような内容で記事が肥大化していくことが多々あります。
顧客に応えることと、その会社らしさを伝えること
顧客のニーズに応えることは、とても大切です。
- サービス内容を知りたい
- 費用の目安を知りたい
- 依頼の流れを知りたい
- どんな実績があるのか確認したい
- 自社の課題に対応してもらえるのか知りたい
そういう情報がなければ、顧客は判断するための手立てがありません。問い合わせをする前に、確認したいこともたくさんあります。
だから、Webサイトには必要な情報をきちんと置くべきです。ただ、ここで難しいのは、顧客が求める情報の多くは、他社にも共通しているということです。
どの会社も、サービス内容を書くし、実績を見せます。選ばれる理由も書くし、よくある質問も載せます。その結果、必要な情報をきちんと整えれば整えるほど、Webサイトの内容はだんだん似ていきます。
これは、ある意味では自然なことです。顧客の不安に答えようとすれば、答えるべき項目はある程度似てくるからです。
でも、そこで終わってしまうと、読んだ人の中に残るものが少ない。
知りたかった情報は手に入った。でも、この会社に相談する理由は特にない…。そういうWebサイトは、少なくありません。
顧客のニーズを満たすことと、その会社が選ばれる理由を伝えることは、似ているようで違います。
必要な情報をそろえることは大切です。でも、それだけでは「この会社がいい」と思う理由にならないことがあります。
SEOが悪いわけではない
こういう話をすると、SEOを否定しているように聞こえるかもしれません。でも、そうではありません。
SEOは、顧客が何を知りたがっているのかを知るための、とても大事な手がかりです。検索キーワードには、顧客の不安や疑問が表れます。検索結果には、今そのテーマについて、どんな情報が求められているのかが表れます。
だから、SEOを考慮しないでコンテンツを考えるのは、顧客を見ないで文章を書くことにもなりかねません。
ただし、SEOだけを見ていると、別の問題が起きます。
- 検索結果の上位にある記事を参考にする
- 競合より詳しく書く
- 見出しを増やす
- 情報量を増やす
その結果、記事の価値が「その会社ならではの視点」ではなく、「他社よりも手厚い情報を網羅できるか」に寄っていく。
読者にとって便利な記事にはなるかもしれません。でも、その会社の姿勢や考え方までは伝わりにくくなる。
SEOを意識するほど、記事が似ていく。顧客のために始めたはずなのに、気づけば競合の記事を見ながら書いている。
どんな会社も差別化をしたい、選ばれたいと考えているのに、SEOに力を入れると同質化してしまう…。
そこに、今のコンテンツづくりの難しさがあると思っています。
その会社でしか言えないことは、検索されにくい
もうひとつ、ずっと悩ましいと思っていることがあります。
その会社でしか言えないことほど、検索されにくいということです。
すでに多くの人が知っている言葉は、すでに顧客の頭の中にある悩みは検索されます。一般的な課題や比較項目も、検索されます。
でも、その会社独自の考え方や、顧客にとって検索する言葉になっていない価値は、直接見つけてもらうことができません。
顧客は、まだ知らない価値を検索することができません。
たとえば、
ある会社には独自の進め方があるかもしれない。
顧客との向き合い方に特徴があるかもしれない。
提案の仕方に違いがあるかもしれない。
サービスの背景に、強い思想があるかもしれない。
でも、それは「検索キーワード」としては存在していないことがあります。既存のお客さんには評価されているし、実際に話せばわかってもらえる。
それなのに、Webサイトではうまく伝わらない。
こういうことは、よくあります。
だから、検索される情報だけでWebサイトを組み立ててしまうと、その会社でしか提供できない価値が、かえって見えにくくなることがあります。
これはかなり大きな問題だと思っています。
情報量が増えても、選ばれる理由が増えるわけではない
Webサイトを改善しようとすると、つい情報を増やしたくなります。
- ページを増やす
- コラムを増やす
- FAQを増やす
- 実績を増やす
- サービス説明を詳しくする
もちろん、それが必要な場合もあります。
でも、情報量が増えたからといって、選ばれる理由が増えるわけではありません。
むしろ、情報が増えたことで、何を見ればいいのかわからなくなることもあります。大事なメッセージが埋もれてしまうこともあります。どこかで見たような説明が増えて、その会社らしさが薄まってしまうこともあります。
大切なのは、情報を増やす前に、何を伝えるべきかを見つめることだと思います。
その会社は、何によって選ばれているのか。
顧客は、どこに価値を感じているのか。
他社と同じように見えている部分の中に、実は違いがあるのではないか。
まだ言葉になっていない強みはないか。
サービスの内容だけでなく、考え方や進め方に独自性はないか。
僕がWebサイトやコンテンツを考えるときに見ているのは、そういう部分です。
その会社が、なぜ選ばれるのか。それをどうすれば伝わる形にできるのか。
そこを考えないまま施策だけを増やしても、Webサイトは強くならないと思っています。
顧客が知りたいことと、会社が本当に伝えるべきこと
顧客が知りたいことに答えながら、その会社でなければ言えないことをどうにじませるか。一般的な課題に答えながら、その会社の視点や姿勢をどう感じてもらうか。必要な情報を伝えながら、記憶に残る違いをどうつくるか。
そこに、コンテンツづくりの本質があるように思います。
これは、単に文章の書き方の話ではありません。
サービスの設計、顧客理解、実績の見せ方、言葉の選び方、写真やデザインの方向性、発信の積み重ね。それらがつながって、はじめて「この会社らしさ」は伝わっていきます。
だから、僕たちはWebサイトを単なるページの集まりだとは考えていません。
会社の価値が、顧客に届くまでの接点の設計だと思っています。
Webサイトだけで伝えようとしすぎない
もうひとつ大事だと思っているのは、Webサイトだけで全部を伝えようとしすぎないことです。
- 検索に向いている情報
- サービスページで伝えるべき内容
- トップページで印象として残すべきもの
- 実績紹介で伝えるべきこと
- SNSやnote、動画、営業資料、提案書の中で伝えた方がよいこと
あれやこれやをWebサイトに詰め込もうとすると、かえって伝わりにくくなることがあります。
選ばれる理由は、強みの羅列ではつくれない
「他社との違いを出したい」という相談は、よくあります。でも、違いを出そうとすると、多くの場合、わかりやすい強みを探してしまいがちです。
- 対応が早い
- 実績が豊富
- 専門性が高い
- 丁寧にサポートする
- お客様に寄り添う
もちろん、それぞれ大切なことです。
ただ、これらの言葉は、多くの会社が使っています。だから、そのまま書いても大きな違いにはなりにくいし、記憶にも残りにくい。大事なのは、強みを並べることではなく、その強みがなぜ生まれているのかを見つめることだと考えています。
なぜ、その対応ができるのか。
どのように顧客と向き合っているのか。
どうして、その進め方をしているのか。
既存の顧客は何を評価してくれているのか。
表面的な特徴の奥に、その会社の考え方や姿勢があります。選ばれる理由は、そこから生まれるのだと思います。
だから、Webサイトのコンテンツを考えるときには、単に「何を書くか」だけではなく、「何を見つけるか」が大事になります。
言葉になっていない価値を見つける。
顧客が評価している理由を掘り下げる。
当たり前だと思っていることの中にある違いを見つける。
それを、顧客に伝わる言葉に置き換える。
伝えるための表現を考えるだけではなく、サービスそのものをもう一度磨き上げることもあります。
僕たちがお客様に評価していただいているのは、単にWebサイトをつくるのではなく、そうした「らしさ」を見つけてカタチにしていくことだと考えています。
選ばれる理由は、いくつもの接点で伝わっていく
その会社らしさや選ばれる理由は、ひとつの記事だけで伝わるものではありません。Webサイト、SNSでの発信、提案、日々の言葉の積み重ねの中で、少しずつ伝わっていくものです。
だからこそ、SEOだけに頼るのではなく、どの価値をどの接点で伝えるのかを考える必要があります。
- 検索で見つけてもらうための情報
- サイト内で理解してもらうための情報
- SNSなどでの発信を通じて接点をつくり、記憶に残す見せ方
- 商談や提案の場で深く伝える価値
それぞれの役割を整理することが大切です。
Webサイトは、会社のすべてではありません。でも、会社の見え方を大きく左右する場所です。
だからこそ、表面的に整えるだけでは足りない。
どのように見つけられ、どう理解され、どんな印象として残り、なぜ相談されるのか。そこまで考えて、はじめてWebサイトは機能しはじめるのだと思います。
顧客が知りたいことと、企業が本当に伝えるべきこと。その両方を整理し、次の出会いにつながる形にしていく。
Webサイトやコンテンツの役割は、そこにあるのだと思います。
検索されるだけでは、選ばれる理由にならない。だから、情報を増やす前に、その会社が何によって選ばれるのかを見つめたい。
検索される情報と、選ばれる理由。そのあいだをどうつなぐか。
ブリッジは、Webサイトやコンテンツを考えるとき、そこを大切にしています。
プロデューサー日誌、その他の記事
投稿者プロフィール

- プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。企業とユーザーの文脈設計を得意としている。公益財団法人画像情報教育振興協会委員
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