
経営者の方と話していて、ウェブサイトの目的を尋ねると、ほとんどの方が同じことをおっしゃいます。
「競合との違いを打ち出したい」
差別化したい。うちにしかない良さを伝えたい。価格競争から抜け出したい。表現は違っても、根っこは同じです。
ところが、その会社のサイトのコンテンツを見ると、不思議なことが起きています。
記事のテーマも、見出しの立て方も、結論も、競合他社のサイトとほとんど同じなのです。
差別化したいと願っている会社が、もっとも没個性的な記事を量産している。今日はこの矛盾について、僕が考えていることを書いてみます。
かつては「伝えたいこと」が先にあった
かつて、SEOが絶対的な力を持つ前は、企業がコンテンツを作るときの順番はこうでした。
まず、自分たちが伝えたいことを考える。自社の考え方、現場で気づいたこと、お客さんに知っておいてほしいこと。もちろん、そこには差別化したいという意図があります。それを記事にしたうえで、SEOの視点から、検索されやすい言葉に多少寄せていく。
つまり、中身が先で、キーワードは後でした。
今は逆のケースが増えています。まずキーワードリサーチをする。検索ボリュームと競合性を調べ、狙えるキーワードを選ぶ。上位表示されている記事を分析し、含めるべきトピックを洗い出す。そして、その設計図に沿って記事を書く。
キーワードが先で、中身は後。完全な逆算です。
誤解のないように言っておくと、私はこのやり方が間違っているとは思っていません。検索する人の言葉から出発するという意味では、むしろ独りよがりなコンテンツよりずっと誠実です。実際、私たちもお客さんが検索する言葉を起点に記事のテーマを考えることをお勧めしています。
それでも、この流れの中で確実に失われているものがあると感じています。
それは「その会社らしさ」です。
真面目に取り組むほど、はまる罠
なぜ、らしさが消えるのか。書き手が手を抜いているからではありません。むしろ逆で、真面目にセオリー通りやるほど、この罠にはまります。
考えてみてください。キーワード逆算で記事を作るとき、参照するのは何でしょうか。検索ボリュームのデータと、すでに上位表示されている記事です。
そして、競合も同じデータを見ています。同じツールで同じキーワードを調べ、同じ上位記事を分析し、同じトピックを網羅する。全員が同じ教科書を写しているのだから、似た記事ができあがるのは当然です。
こうして生まれるのは、世の中にすでにある記事の平均値です。間違ったことは書いていない。情報も網羅されている。ただ、その記事である必要が、どこにもない。
差別化したいという目的でコンテンツに投資したはずなのに、できあがったのは「どの会社が書いても同じ記事」。これが、冒頭の矛盾の正体です。
キーワードリサーチは「問いを選ぶ道具」である
では、キーワードリサーチをやめるべきなのか。違います。問題は道具ではなく、道具の使いどころです。
僕はこんなふうに考えています。
キーワードリサーチは「どの問いに答えるか」を選ぶ道具であって、「どう答えるか」を決める道具ではない。
お客さんがどんな言葉で検索しているか。どんな悩みを抱えてその言葉を打ち込んでいるか。これを知るためにリサーチは欠かせません。問いは、自社の中からは出てこないからです。問いはお客さんの中にあります。
しかし、答えは違います。答えは自社の中にしかありません。
現場で何百件と向き合ってきたからわかること。失敗から学んだこと。業界の常識に対して、自社だけが持っている違和感。これらは検索結果のどこを分析しても出てきません。
らしさが消えるのは、キーワードを使ったからではありません。答えまで検索結果から逆算した、つまり答えを外注したからです。
問いはマーケットから見つける。答えは自分の中から出す。この役割分担さえ守れば、キーワードリサーチとらしさは両立します。むしろ、お客さんの問いに自社にしか書けない答えを返すことこそ、コンテンツでできる唯一の差別化だと私は考えています。
AI検索の時代、平均値の記事は構造的に負ける
最後にひとつ。ここまでの話、「らしさを大切にしよう」というきれいごとに聞こえたかもしれません。でも、これは損得の話なのです。
今や、ChatGPTやAIによる検索が当たり前になりつつあります。AIは無数の記事を読み込み、要約して答えを返します。つまり、世の中の平均値は、すでにAI自身が言えることになりました。
平均値の記事は、AIにとって引用する理由がありません。すでに知っていることの繰り返しだからです。AIが引用したくなるのは、よくある問いに対して、他では見たことのない答えを返している記事です。独自の経験、独自のデータ、独自の視点。要するに、「らしさ」です。
皮肉なことに、「らしさ」を削ってでも検索に最適化しようとする書き方は、これからの検索環境でもっとも見つけてもらえない書き方になっていきます。
かつて、「らしさ」を出すことと検索されることはトレードオフのように語られてきました。これからは違います。「らしさ」は、検索されるための条件になります。
差別化したいなら、書く前に検索結果を見るのはやめて、まず自分たちの中を覗いてみてください。お客さんの問いに対して、自分たちにしか言えないことは何か。
それが見つからないうちは、何本書いても、競合の記事が一本増えるだけだと思っています。
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投稿者プロフィール

- プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。企業とユーザーの文脈設計を得意としている。公益財団法人画像情報教育振興協会委員
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