Webサイトの企画でアイデアを出す前に整理すべきこと

この記事でわかること

Webサイトの企画では、いきなりデザインやコンテンツのアイデアを考えるのではなく、誰に、何を理解してもらい、どのような行動につなげたいのかを整理することが重要です。事業の課題、顧客の状況、自社の強み、判断に必要な情報を明確にすることで、見た目の新しさだけではなく、Webサイトが果たすべき役割に沿った企画を考えられるようになります。

アイデア出しから始めない

Webサイトの企画会議で、「何か面白いアイデアはないか」と聞かれることがあります。

競合とは違う見せ方にしたい。印象に残るコンテンツをつくりたい。会社の新しさや独自性を表現したい。

こうした要望自体は間違いではありません。

ただし、何を解決するためのWebサイトなのかが整理されていない状態でアイデアを出しても、見た目や機能の話ばかりが増えていきます。

動画を使う。動きのあるデザインにする。切り口を変えたコラムを書く。顧客インタビューを載せる。

どれも企画の候補にはなりますが、それをやる理由がなければ、単なる思いつきで終わってしまいます。

Webサイトの企画に必要なのは、自由な発想の前に、考えるための前提を整理することです。

アイデアが出ないのではなく、判断する基準がない

Webサイトの企画が進まないとき、「アイデアが足りない」と考えがちです。

しかし、実際にはアイデアの不足よりも、何を基準にアイデアを考え、選べばよいのかが決まっていないことの方が多くあります。

たとえば、トップページに動画を掲載する案が出たとします。

企業の雰囲気や技術力を、文章や写真だけでは伝えにくいのであれば、動画は有効かもしれません。一方で、競合サイトが使っているから、最近よく見かけるからという理由だけでは、その会社のWebサイトに必要かどうかは判断できません。

大切なのは、アイデアそのものの新しさではありません。

そのアイデアによって、誰のどのような理解が変わるのか。Webサイトが抱えている問題をどのように解決するのか。そこまで説明できて、初めて企画として成立します。

Webサイトの企画前に整理したい5つのこと

1.Webサイトで解決したい事業上の課題

最初に整理したいのは、Webサイトをつくること自体の目的ではありません。

「サイトが古くなった」「スマートフォンで見にくい」といった表面的な問題だけでなく、事業上のどのような課題を解決したいのかを考えます。

たとえば、次のような課題です。

  • 会社の強みが伝わらず、価格だけで比較されている
  • 新しい事業が既存顧客に認知されていない
  • 営業担当者が商談のたびに同じ説明を繰り返している
  • 問い合わせはあるが、求めている顧客と合っていない
  • 採用候補者に仕事内容や会社の考え方が伝わっていない

課題が違えば、必要な企画も変わります。

価格比較から抜け出したい会社と、新しいサービスを広く認知させたい会社では、同じコーポレートサイトでも伝える内容や優先順位は異なります。

2.誰が、どのような状況で見るのか

「ターゲットは経営者です」と決めるだけでは、企画の前提として十分ではありません。

同じ経営者でも、初めて会社を知った人と、すでに商談を終えて発注先を比較している人では、知りたいことが違うからです。

検索から初めて訪れる人であれば、まず自分の課題と関係がある会社なのかを判断します。紹介を受けた人であれば、実績や支援範囲、会社としての信頼性を確認するかもしれません。

誰に見てほしいかだけでなく、その人がどのような経緯で訪れ、何を判断しようとしているのかまで考える必要があります。

Webサイトの企画は、企業が伝えたい順番ではなく、訪問者が理解し、判断する順番から考えます。

3.見た人に何を理解してほしいのか

Webサイトに載せたい情報を集める前に、最終的にどのような理解をつくりたいのかを明確にします。

「信頼できる会社だと思ってほしい」「技術力の高さを伝えたい」という表現だけでは、まだ抽象的です。

どのような事実を知ることで、信頼できると判断するのか。技術力の高さは、顧客にどのような利益をもたらすのか。そこまで具体化します。

たとえば、

「幅広い対応力がある会社」

ではなく、

「要件が決まっていない段階から相談でき、社内で整理できていない内容も含めて、制作に必要な形へまとめてもらえる会社」

と考えれば、必要なコンテンツも見えてきます。

抽象的な印象を目標にするのではなく、訪問者に持ち帰ってほしい具体的な理解を決めることが重要です。

4.その理解を支える強みと根拠

自社の強みを考えるとき、「品質」「実績」「対応力」「丁寧さ」といった言葉だけでは、他社との違いは伝わりません。

必要なのは、その強みがどのような仕事として現れているのかを説明することです。

  • 顧客から何を聞き出しているのか
  • どの段階から支援しているのか
  • 一般的な進め方とどこが違うのか
  • どのような問題を解決したのか
  • その強みを裏づける事例や成果はあるのか

こうした具体的な事実を整理すると、事例紹介、プロジェクトストーリー、比較コンテンツ、制作プロセスなど、必要な企画が考えやすくなります。

強みは、印象的な言葉を考えるだけでは生まれません。実際の仕事の中にある判断や行動を見つけ、それを顧客が理解できる言葉に変える必要があります。

5.見た人に、次に何をしてほしいのか

Webサイトを見たあとに取ってほしい行動も、企画前に整理します。

すべての訪問者が、すぐに問い合わせをするわけではありません。

事例を読む。サービスの違いを理解する。社内で検討するために資料をダウンロードする。担当者に共有する。相談できる会社として覚えておく。

こうした途中の行動も含めて考えることで、Webサイト内に必要な導線が見えてきます。

問い合わせボタンを増やすだけでは、訪問者が行動する理由は生まれません。判断に必要な情報を適切な順番で提示し、その先に自然な選択肢を用意することが必要です。

整理した内容をもとに、初めてアイデアを考える

ここまで整理してから、どのようなコンテンツや表現が適しているかを考えます。

たとえば、技術の違いが文章では伝わりにくいなら、工程を図解したり、比較できる写真や動画を用意したりする方法があります。

支援前と支援後の違いを伝えたいなら、完成したWebサイトを見せるだけでなく、どのような課題があり、何を整理し、なぜその形になったのかを事例として紹介する方法があります。

複数のサービスから何を選べばよいかわからない顧客が多いなら、サービスを並べるだけでなく、課題や状況から選べる導線をつくることも考えられます。

このように、目的と課題が明確になると、アイデアは思いつきではなくなります。

「面白そうだから採用する」のではなく、「この理解をつくるために必要だから採用する」と判断できるようになります。

Webサイトのアイデアは、事業と顧客の間から生まれる

Webサイトの企画というと、斬新な表現や新しい機能を考えることだと思われがちです。

しかし、本当に必要なアイデアは、何もないところから突然生まれるものではありません。

企業が伝えたいことと、顧客が知りたいこと。その間にあるズレを見つけ、どうすれば理解しやすくなるかを考えることから生まれます。

そのためには、アイデアを出す前に、事業の課題、顧客の状況、自社の強み、判断に必要な情報を整理しなければなりません。

企画の独自性は、奇抜さから生まれるのではありません。

その会社に固有の事業や顧客、仕事の進め方を深く理解し、それに合った伝え方を考えることで生まれます。

投稿者プロフィール

橋本敬(はしもとたかし)
橋本敬(はしもとたかし)
プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。企業とユーザーの文脈設計を得意としている。公益財団法人画像情報教育振興協会委員