ナーチャリングとプレファレンス

もう何年も前のことですが、プレファレンスについて考える時に必ず思い出す印象深いエピソードがあります。

ある部品メーカー企業様のWebサイトリニューアルの際にご担当社様から聞いた話です。

その会社では、近隣の大学の研究室からの依頼があれば部品を無償で提供しているそうです。しかも超小ロットで提供しているとのこと。

その理由を聞くと、予算が厳しい大学の研究室の研究開発に寄与したいという思いと、研究室の学生が将来就職した時に発注先として自社を思い出し、選んでくれるかもしれない、という考えがあってのことでした。

後者は冗談のようにも聞こえますが、可能性としては十分ありうる話です。ユーザーとして自社の技術力や品質を知ってもらっていれば、選んでもらえる可能性は上がるかもしれません。

効果はありますかとの問いかけに「今のところ、多少はね」と答える担当者の方の笑顔が印象的でした。

自社が選ばれるかどうかには、プレファレンスもおおいにかかわる

当時はまだナーチャリングなんて言葉は広く使われていませんでしたが、今思えば、これぞナーチャリングと言えるのではないでしょうか。学生が社会に出て選定する立場になる確率やリードタイムを考えれば、期待値はさほど高くないかもしれませんが、未来の顧客をつくるという面白い取り組みだなと思いました。

技術や品質を実際に体験することによる効果はもちろんのこと、その企業の思いや姿勢もブランドイメージも学生の心に残ることでしょう。

こうした考え方や取り組みは、実はWebマーケティングでも同じなのではないかと考えています。

自社が選ばれる理由は何でしょうか。

技術や品質、価格、納期などが大切なのは言うまでもありませんが、その先には人がいるということを意識する必要があります。選ばれるかどうかには、人が感じるプレファレンスもおおいに関係してきます。

ビジネスとはいえど、選択において人が介在する限り「どう思われるているのか」は私たちが思っている以上に作用します。

リードナーチャリングを単純に情報での顧客教育という観点だけではなく、自社へのプレファレンスを高めることも考えながら取り組むことで、他社との差別化にもつながります。

単純な違いをつくるのが難しく、比較も簡単にできる時代では、こうした考え方をもとにしたアウトプットが求められていることを日々実感しています。

私たちは、徹底的な顧客視点でのコンテンツの制作を通じて、Webサイトを「情報発信ツール」から「ビジネスの強み」へと変えるお手伝いをしています。Webサイトはあるものの、マーケティング活動にうまく活用できていないなどの課題をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

橋本敬(はしもとたかし)
プロデューサー・クリエイティブディレクター。早稲田大学政治経済学部卒業。リクルートグループ、オン・ザ・エッヂ、ミツエーリンクス、博報堂アイ・スタジオを経て独立、株式会社ブリッジを設立。徹底的なユーザー視点でのWEBサイトの構築やコンテンツ制作を通じて事業課題の解決を支援している。